貿易実務者は英語を避けられない
貿易に携わる人、希望したい人にとって、自己啓発は必須である。
その際、何の勉強をはじめるのかが重要になってくる。
限られた時間を有効に使うため、TOEICの勉強をはじめるべきか?それとも、貿易実務検定の学習に着手すべきか?迷いどころ。それぞれの立場によって異なるもの...。
概して、TOEIC試験は、頭の片隅に入れておいて損はない。
1.ビギナーはTOEIC一択
まず、貿易業界に入って間もない人、貿易業界に就職したい、転職したいと思っている人については、貿易実務検定よりもTOEICをおススメしたい。
「TOEICは受験者も多く、自分は英語は苦手なので、貿易実務検定を受けたい」
という考えの人もいるかもしれないが、あまり関心しない。
まず、貿易業界というのは、これまでも、そして、これからも「英語」はデフォルト、つまり、前提となる基礎知識である。
英語は、時間をかけないと上達が難しい。
一方、貿易実務検定や通関士などは、貿易実務に携わり、実務経験を経て(業界のイメージをつかめてから)初めても遅くはない。
特に、貿易実務検定は、入門クラスのC級でさえ、「貿易英語の知識」の問題があるので、「英語嫌いなので貿易実務検定を…」という発想にはムリがある。
さらに、貿易業界ビギナーにとってTOEICをススめるのは、TOEICは汎用性が高い、ぶっちゃけていえば「つぶしが効く」ということである。
いざ、貿易業務をスタートさせたものの、自分に向いてないことがわかった場合、TOEICでは、そのまま学習を継続しても、他の業界(たとえば、製造メーカー、サービス業など)にも、スキルの持ち運びができる。
一方、「貿易実務検定」は、貿易業界に特化した検定試験なので、他の業界の汎用性が難しい。
TOEICに比べて、マイナーな試験であるからこそ、実際の雇用機会も狭くなる。
あえてマイナー志向(ニッチな資格)を選ぶのも選択としては悪くないが、ひとまず、一人前になるまでは、焦って「貿易実務検定」に着手することなく、まずは、将来を見据えて「TOEIC」のスコアアップに全力で取り組んでもらいたい。
2.中堅者はTOEICを8割に
貿易の仕事も慣れてきた。TOEICのスコアも、そこそこ(600点以上)になった中堅者には、視野を広げる意味でも、TOEICに軸足を定めつつ、貿易実務検定や通関士といった試験を意識してもいいかもしれない。
なによりもTOEICには「壁」がある。
600点まではコンスタントにスコアが上がるのだが、特に、730点、あるいは800点を前にして、伸び悩む時期がくる。
頭をリフレッシュさせるために、貿易実務検定に「浮気」してみてはどうだろう?
当たり前だが、TOEICテストというのは、すべて英語である。
だから、日本語が中心となる貿易実務検定にも手を広げることは、良い意味で気分転換になる。
私の場合、TOEICが伸び悩んだので、英検に再挑戦の選択をしたが、これは、結構、厄介なことだった。
極端な例だが、朝にTOEICの勉強、夜に英検の勉強をしていた。
大谷翔平ばりに英検とTOEICの「二刀流」を目指したものの、どちらも「英語脳」を酷使するので、結局は、「二兎追うものは一羽も得ず」という状態になってしまった。
多くの人が言っているように、英検とTOEICの両方を同時に学習することは非効率である。(そんな失敗を経験して、私は、現在、英検準1級に絞っている)
ただし、だからといって、ずっとTOEIC対策ばかりやっているのでは、それはそれで苦行である。もちろん、集中力を持続できる人なら、限りある時間をすべてTOEIC対策に費やすのもありかと思う。
けれども、大概の人は、私のように「飽きっぽい」のではないだろうか?
浮気や不倫は褒められた話ではないが、TOEICと貿易実務検定の二股は悪くない。
ただし、あくまでも主軸をTOEICにして、貿易実務検定を、箸休め、骨休め程度にとどめておいた方がいいのではないだろうか?
すくなくても、TOEICか貿易実務検定かの選択については、貿易従事者の優先度は、「TOEICが先」ということを強調したい。
なにしろTOEICには「スコアの壁」が立ちはだかるので、腰を据えて覚悟を決める必要がある。
一方、貿易実務検定は、実務経験や博学要素がモノを言うので、せっかく貿易の仕事にかかわっているのなら、資格試験でハクをつけようよ、という程度にとどめておいた方が、ストレス軽減にもなる。
3.ベテランは50:50
最後に、ベテランの貿易実務者について。
さすがに、ベテランの域になる貿易従事者にとって、英語を軽視している人はいないであろう。
TOEICを受けたか受けないかは別にしても、貿易の仕事では、頻繁に英語が使われる。貿易実務に限れば、「英語は出来てあたりまえ」ということになる。
なぜなら、貿易書類や用語のほとんどが「英語化」されているからである。
ただし、私の感触では、貿易実務上級者がTOEICや英検などの英語資格試験に挑戦ししている人は意外と少ない。
特にTOEICでは、英文仕入書(インボイス)や船積スケジュールなど、見覚えのあるフォーマットがそのまま試験に出題されることが多々ある。
(貿易実務者の私にとって、本番のTOECで「貿易ネタ」が出題されると、心の中で、ガッツポーズをする…)
何がいいたいかといえば、ベテランともなれば、英語嫌いはさすがにいないだろう。
勉強嫌い、資格嫌いはいたとしても…。
やはり、貿易の経験を裏付ける「資格」が、日々の仕事のモチベーションアップにつながるのである。
そんな人には、今さらながら「TOEIC」や「貿易実務検定」といった資格勉強を進めたい。資格は若い社員だけがやることではない。
ベテランやシニアこそ、資格にチャレンジして、頭の体操をはじめよう。
4.まとめ(資格は人なり)
以上のように、貿易実務者、実務希望者、転職者にとって、TOEICが先か?貿易実務検定が先か?という問題については、
・ビギナーは業界に染まる前にTOEIC一択
・中堅者はTOEIC8割で検定のリフレッシュ
・ベテランはTOEICと検定併用で頭の体操
という整理を行ったところである。
もちろん、最終的な判断は、自分自身の気持ち次第。
TOEICにせよ貿易実務検定にせよ、勉強をしたいという気持ちが大切である。